記事一覧

『サッカー戦術をボードゲームで表現できるか?』対局リプレイ・36

 
 
前回よりつづき》

 
 後半開始から少し慎重に攻撃態勢を作っていた《赤》。
 《青》陣のペナルティエリア中央に前線の選手を寄せ、そこから、あえて
サイコロシュートでない通常のシュートを放ちました。

 
《第95手終了時》
ファイル 72-1.jpg

 
 明らかに意図が込められたこの攻撃ですが、これに《青》はどう対処する
でしょうか。

 
 

●後半4分/第96手

 《青》の第96手。
 《赤》はシュートを撃っているので、ここで止めなければ当然そのまま失点
してしまいます。そしてこのシュートはペナルティエリア内からのものなので、
シュートを受けている[GOAL]コマからボールを奪っての阻止はできません。
阻止するためには、シュートを放っている《赤》選手コマから直接ボールを
奪取してシュートを「切る」必要があります。

 
 問題は、どのコマを動かして、どうボールを奪うかです。
 《赤》がこの位置で通常のシュートを撃ったのは、《青》のシュート阻止の
動きを誘うことで、より有利な形を作ろうとしているからだと考えられます。

 サイコロシュートのルールを導入している試合では、得点のために有効な
方法として、サイコロシュートを撃って失敗しても次・また次と連続シュート
を放つ波状攻撃ができる形を作る……というものがあります。
 6分の1の確率でしか決まらないサイコロシュートですが、連続して回数を
増やせばそれだけ確率が上がるわけです。

 サイコロシュートは、失敗すると相手の[GK]コマにボールが渡ります。
 つまり、「サイコロシュートを失敗した次手で、相手[GK]コマにペナルティ
エリア内で隣接する」……という動きを続けることができれば、それだけ
連続してサイコロシュートを撃ち続けることができるのです。

 今の《赤》のシュートに対しても《青》は慎重に動きを選ばなければ、
《赤》の連続シュートの罠に捕らわれることになります。

 
 
 では、どのような動きでシュートを切ればいいのか。
 現在のシュートを阻止できる《青》の選手コマは、センターバックの位置に
いる左右の[Fig]コマと、[GK]コマです。
 《青》は手を検討してみます。

 

※下図A

 まず、[GK]で対応する場合。
 [GK]で《赤》[Mov]に隣接してボールを奪うには、図のどちらかの位置に
移動して、それぞれ隣り合う[Fig]コマにボールを渡す……という対処が
できます。
 しかし、これはいずれもうまくありません。
 [Fig]コマにボールを渡しても、《赤》[Mov]の傍らに控える《赤》[Fig]が
次手ですぐにまたボールを奪い、またシュートをするだろうと思われます。
加えて、《赤》コマに[GK]が直に隣接してしまうと、《赤》のサイコロシュー
トが失敗してボールが[GK]に渡った時が問題です。ボールを持った[GK]コマが
ペナルティエリア内どこに動いても、《赤》[Mov]はマンマーク移動で漏らさず
追跡することが可能になってしまうからです。

 

※下図B

 では、左側(《青》主観で右側)の[Fig]で対応した場合。
 《赤》[Mov]と《青》[GK]の間に割り込むように移動すると、《赤》[Mov]から
ボールを奪った上で[GK]に渡してキープすることができます。しかし、この位置
で[GK]がボールを受けても、ボールを失った《赤》[Mov]は通常の移動で[GK]に
隣接してボール奪取~サイコロシュートが可能になってしまいます。そして
[GK]に隣接されたからは、シュート失敗後も[GK]は広範に追跡を受けることに
なるわけです。

 

※下図C

 左側(《青》主観で右側)[Fig]による対応では、[Fig]の競り合い能力を使う
こともできます。
 《赤》[Mov]に隣接移動して競り合いをすれば、ボールを奪いつつ、逆側にいる
[Fig]の隣まで移動して受け渡すことが可能ですが……しかしこれはどうしても、
ボールホルダーのコマが《赤》[Fig]と連なって並んだ形になってしまいます。
すると《赤》は次手で、こちらも[Fig]の競り合いで苦もなくボールを奪い返して
シュートを放ってくるでしょう。これもうまくありません。

 
 ここまでの対応例は結局、すべて《赤》に攻撃機会を与えてしまうもので、
これらを選べば《赤》の術中に陥ってしまいます。
 では最後に、右側(《青》主観で左側)の[Fig]で対応した場合はどうで
しょうか。

 こちらの[Fig]はこの時点ですでに《赤》コマの連なりに隣接しており、
「競り合いを仕掛けた後に移動して、相手コマから離れる」という動きが可能
です。なので、このコマで対処する方法がどうやら良さそうです。

 

※下図D

 右側(《青》主観で左側)の[Fig]でいかに対応するか。
 競り合いによって多少 移動範囲を広く得られますが、《赤》[Fig]だけで
なく《赤》[Mov]にまで競り合いをかけてしまうと、そこからどう移動しても、
これまでの検討パターンと同じように《赤》コマの追随を許してしまいます。
 つまり採るべき手は、《赤》[Fig]のみに競り合いをかけて《赤》[Mov]から
ボールを奪い、そこから移動して《赤》選手コマから離れることです。

 
ファイル 72-2.jpg

 
 
 ――と、こうした検討を経て、《青》はこのように移動しました。

 
ファイル 72-3.jpg

 あまり考えず反射的に指していたら、《赤》の企図した連続攻撃を浴びる
ことになるところだったかもしれません。
 これでひとまず、当面の危機は脱することができたと考え、青はここで
積極的な時間消費を選び、時計を後半4分に進めました。

 
 

●後半5分/第97手

 《赤》の第97手。
 狙っていた後半開始直後の攻撃を《青》にいなされてしまった《赤》ですが、
至って落ち着いた様子で、次の機会を狙います。
 とりあえずは、[Fig]でシンプルに移動~ボール奪取を行いました。
 すぐボールを完全に奪い返せるわけではありませんが、相手ボール保持者に
競り合い可能な[Fig]コマで追随していることが重要、という考えでしょうか。
 時間は後半5分になります。

ファイル 72-4.jpg

 
 

●後半6分/第98手

 《青》の第98手。
 《赤》[Fig]が自陣ペナルティエリアから下がった結果、《青》コマで直ちに
ボールを奪えるのは[Fig]と[Bal]です。このどちらかでボール奪取~移動をして
《赤》とボール保持を競うわけですが、すぐに《赤》にボールを奪い返されない
ように……ということを考えると、[Fig]・[Bal]どちらも、移動先に選べる
行動可能範囲は意外に狭いことがわかります。

 考えた《青》は、[Bal]でボールを奪って斜め後方に移動、[Spr]にボールを
渡してキープさせました。
 時間は後半6分に。

ファイル 72-5.jpg

 ボールは奪ったものの、これではまだ《赤》[Fig]の追跡を振り払えるわけ
でもなく、またフィールド角の狭い領域にボールを運んだ選択は 悪い方に
作用していく危険もありますが、どうなっていくでしょうか。

 
 
《つづく》